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Fiction お話

寝起き Tue 28 Mar 2000


もちろん言うまでもないことですが、このお話は実在するお名前をお借りしておりますが、 すべてフィクション。妄想の産物です。(笑)


「カトリさん、起きてくださいっ!遅刻しますよっ!」
 わざと大きな音を立てて寝室のドアを開けると、すたすたと窓に歩み寄ってカーテンをバサッと開けた。 日当たりの良い彼の寝室はその瞬間、まぶしいほどの光で満たされたが、その程度ではいつもの通り反応は無い。 ベッドからはなぜか毛布が半分以上すでに床に落下していて、 羽根布団だけはかろうじてベッドから落ちていないという状態。 その布団から長い右足が大きく投げ出されていた。この寝相の悪さはどうにかならないものか・・・。
 軽く寝息を立てているシンゴの姿を見下ろしつつ、これからの数分間を考えて、はぁとため息をついた。 一応順序は守るべきかな?と、ちょっと考えて、シンゴの両肩を揺すりながら、
「カトリさ〜んっ!起きてくださ〜いっ!」
 と、耳元でわめいてみたが、やはり反応無し。腕に更に力を込めて強く揺さぶってみるが無駄な努力だった。 仕方ない・・・。
「カトリさんっ!!!」
 勢い良く布団を引っぺがすと、シンゴのパジャマの上着のすそはめくれ上がっていて、すべすべした肌が覗いていた。 よかった〜、今日はちゃんとパジャマ、着てた。以前こうやって布団をめくったら、彼がパンツ一枚の姿で寝ていて、 ワタシの方が悲鳴を上げて大騒ぎしたことがあったのだ。
「うん・・・っ。」
 シンゴが寝返りを打った。とりあえず今朝初めての反応。まぁまぁ順調ってとこだろう。 しかし、シンゴは半分床に落ちた足元の毛布を無意識に手繰(たぐ)り上げ、その毛布を抱きしめて横向きに丸まると、 こちらに背中を向けて再び眠りに落ちてしまった。 この体勢で眠っている姿は、きっと夜だと別の意味でため息が出るくらい可愛いのだろうが、 朝に限ってはそんなことを考えている暇はない。 このままではまた熟睡に入ってしまう。これはまずいっ!
「バシッ!」
 右手には足元に放りなげてあったスリッパの片割れ。 そのスリッパが気持ち良いくらい大きな音を立てて見事にシンゴの後頭部を直撃した。
「う〜んっ。」
 シンゴは仰向けになって、やっと薄目を開けて眩しそうにこちらを見上げた。
「もうちょっとだけぇ・・・。」
 すでにまた眠りへと引き戻されつつあり、語尾は言葉になっていなかった。
「カトリさんっ!駄目ですよ、起きてくださいっ!」
 しかし、時すでに遅し。シンゴは再び寝息を立て始めていた。このガキっ、えーかげんにせいっ!・・・もう、切れた。
「ぐぇっ。」
 その瞬間、シンゴの鳩尾(みぞおち)にワタシのエルボーが見事に決まった。
「いって〜。」
 どうやら今度はちゃんと目が覚めたらしい。よかった、よかった。
「おはようございます。もうすぐマネージャーさんが来られますよ。 早くシャワー浴びてきてください、朝食用意してありますから。炊き立てのご飯とお豆腐のお味噌汁。」
 ワタシが言いたいことだけ言って背を向けて部屋を出ようとした瞬間。
「いて〜んだよっ、くそばばぁっ!」
 後ろからシンゴの蹴(け)りが跳(と)んできたのを、不覚にも避け損ねた。
「いった〜い。」
 いかん、油断した・・・。まだまだ修行が足りんな。明日はちゃんと避けなきゃ。 バスルームに向かうシンゴの後ろ姿を見送りながらそう思うワタシだった。

 ワタシの仕事は主にシンゴをきちんと起こして仕事に送り出すこと。 あとは朝食の支度だのちょっとした掃除や片付けもの。「人間目覚まし時計 兼 簡易版家政婦」といったもので、 彼の寝起きの悪さに手を焼いた周囲の人たちが考えた出した苦肉の策だった。 自宅での仕事を本業としているワタシには丁度良いアルバイトと思って引き受けたのだが、 ところがこれが本業より体力のいるアルバイトだったのだ。
「ふわ〜っ。」
 キッチンで味噌汁を温め直しながら、手早くだし巻き卵を巻いていたところに、 まだ眠そうなシンゴが大きなあくびをし、目をこすりながらバスルームから戻ってきた。 下はパジャマのズボンを履いていたが、上半身は裸のままで、首に掛けたバスタオルで髪の毛をごしごしと拭いている。
「カトリさ〜ん、飛沫(しぶき)が飛ぶじゃないですかぁ。」
 あとで掃除するのはワタシなんだぞ・・・と暗にほのめかしてみたが、シンゴは一向に気にする様子もない。
「それにお願いですから、なんか着てくださいよぉ。ワタシだって一応レディなんですから。」
「誰がレディだってぇ?」
 勘弁してよぉ・・・とシンゴが笑いながら小さくつぶやくのを聞き逃さなかったが、 今更そんなこと気にしていては彼の相手は勤まらない。
「いただきまぁす。」
 ダイニングテーブルの上にご飯と味噌汁、だし巻き卵とほうれん草のおひたしの小鉢が並べられると、 シンゴは箸を取り、掌を合わせて大きな声で言った。若い男の子に似合わず、こういうところはちゃんとしている。
 シンゴの食べっぷりはいつ見ても豪快で、あっという間にご飯と味噌汁を平らげると、
「おかわりっ!」
 と、手にした茶碗をワタシの眼の前に突き出した。 自分が作ったものをこんなふうに食べてもらえるのが嬉しくて、さっき蹴りを入れられたことは帳消しになってしまう。 新しくよそったご飯と味噌汁を美味しそうに頬張り、すべてのお皿をきれいに空にすると、
「ごちそうさまでした。」
 シンゴはそう言ってワタシの顔を見てにこっと微笑(ほほえ)んだ。

 シンゴが着替えをするために席を立って寝室へ戻っていったところに電話が鳴った。 ナンバーディスプレイに表示された番号は彼のマネージャーのもので、迎えが到着したという連絡だった。 受話器を置くと、寝室に向かって声を掛けた。
「お迎え、来ましたよ。」
「はぁい、いま行くぅ。」
 そう言いながら出てきたシンゴは、お前、それは寝間着(ねまき)じゃないのか?と見紛(みまご)うようなジャージ姿だった。
「カトリさ〜ん、そのカッコ、もうちょっと何とかしたほうが・・・。」
「いいじゃん。どうせ現場ですぐ衣装に着替えちゃうんだし。」
「それにしたって、天下のカトリシンゴがそれじゃぁ・・・。」
 ファンの子ががっかりする・・・と言いかけたときには、シンゴはすでにワタシの脇をすり抜け、 軽やかな足取りで玄関に向かっていた。 スニーカーをきちんと履かずに申し訳程度に引っかけると、表に出かけたところで何を思ったかふと立ち止まった。 そして、玄関の扉から上半身だけを覗かせ、中のワタシに向かって手を振った。
「行ってきま〜す。また明日、ね。」
 ニッコリ微笑むその顔に数十分前の苦労を忘れ、思わず頬を緩めてしまうのだった。

 こうして、シンゴとワタシの飽くなき朝のバトルは明日も続くのだ。
(10 Mar 1999)


 『ハードディスクお掃除強化週間』シリーズ Part2。

これは「寝起きの香取さんを見てみたい!」という欲望に取りつかれ、ちょうど1年くらい前に書いたものです。
初めてご本体そのままのキャラを想定して書いたのですが、今思うとなんて恐れ多い・・・。(^^ゞ
「『ぷっ』すま」のスペシャルであのおそろしくカワイイ&おそろしく寝起きの悪い香取さんを拝見したのはその後のことですので、 今ではこんなに簡単に起こせるものとは思っておりませんです。ハイ。
それに、今、書いたらもっとエロくなってしまうことが確実・・・。<大バカもの。

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