好きなものは好きって言っちゃえSpeak Out about SMAP
since 98/07/20  by 真琴 macott@roy.hi-ho.ne.jp
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Baby・Baby(ベィビィ・ベィビィ) その2  01/01/04

 マリを腕に抱いた右手に義兄に書いてもらった地図の紙片を持って、不器用にそれを眺めながらシンゴは保育園の場所を探していた。 住宅街の道はどれもこれも似たような風景で目的の建物はなかなか見つからない。 まわりを見回しながらウロウロしていると、シンゴの肩越しに後ろに顔を向けていたマリが突然きゃっきゃと声を上げて手足をバタバタさせ始めた。
「まぁーりぃーちゃんっ」
 背後からちょっと擦れた男の声が聞こえて、シンゴはその声のほうを振り返った。
(げっ、あいつ、今朝の・・・)
 後ろから小走りでこちらに向かってきていたのは小柄で細身な青年。 その青年は今朝シンゴがコンビニの近くでぶつかりそうになったあのムカつくオトコに間違いなかった。 青年はシンゴのそばまでやってくると、シンゴではなく真っ直ぐにマリの顔を見て満面の笑みを浮かべた。 笑うとアーモンド形の大きな眼がやや細くなって目尻も少し下がる。 その優しげな眼差しは今朝シンゴを睨み付けた時の目つきとはまるで別人のようで、シンゴは一瞬うろたえた。
 マリはシンゴの腕の中でその青年に頭を撫でられて嬉しそうに笑っている。 最近マリは人見知りをし始めていて、初めての人にはなかなかなつかない。 シンゴですら昨日姉のうちを訪れて久し振りにマリを抱っこしたときに大泣きされ、一日かけてやっと慣れたくらいだった。 それなのにこの青年に対するこの愛想の良さは・・・とシンゴが不思議に思っていると、青年はやっとシンゴの顔を見て姿勢を正した。
「おはようございます。みどり園の保育士のナカイと言います」
「ホイクシ?」
 聞きなれない単語にシンゴは思わず聞き返した。
「保父のこと。最近は正式には保母とか保父じゃなくて保育士っていう呼び方になってるんです」
「あ、そうなんですか・・・すみません、オレ、知らなくて」
(こんなやつが保育園の先生かよ?)
 謝りつつも、今朝ぶつかりそうになって怒鳴られたときのことを思い出してシンゴは心の中で呟いた。
「何か言いました?」
「あ、いえ・・・オレ、マリの叔父です」
「マリちゃんのママから聞いてます。当分、弟さんがマリちゃんの送り迎えするからって」
 どうやらナカイはシンゴが自転車でぶつかった男だとは気付いていないようだった。
「よろしくおねがいします」
 シンゴが挨拶をすると、マリがふたりの会話が終わるのが待ち切れないとでも言うようにきゃっきゃと声を立ててナカイに向かって手を伸ばした。
「マリちゃーん、おいでー」
 ナカイはディパックを右肩から降ろして左に掛け直すとシンゴの腕から器用にマリを抱き取とって、シンゴに構わずさっさと歩き出した。 ナカイの腕にすっぽりと収まったマリが急に静かになったので、気になったシンゴは歩いていくナカイの後ろに早足で近付いてそっとマリの様子を覗いた。 するとマリはすっかり安心しきった顔つきでナカイの顔を見上げて笑っている。 マリが自分にはほとんど見せたことのないような表情をナカイに向けているのを見て、シンゴはちょっと驚きつつも感心した。
(ふーん、やっぱプロなんだぁ)
「え?」
 と、ナカイが振り向く。 まるで思っていることが読まれているようでシンゴはびくっとしたが、慌てて愛想笑いを浮かべてそのままナカイのあとを付いて行った。

 みどり園はそこから2つほど角を曲がったところだった。シンゴはすぐ近くまで来て迷っていたのだ。保育園の敷地に入るとナカイはシンゴのほうを振り返った。
「もういいですよ。マリちゃん、確かにお預かりしましたから」
「え?・・・あ、そうですか」
 言われるままにシンゴは姉から預かってきたトートバックをナカイに差し出した。
「お迎えは大丈夫ですか?道、迷わないでちゃんと来て下さいねー」
 そう言いながらナカイがにやっと薄笑いを浮かべた。 多分シンゴがこの場所がわからなくてきょろきょろしていたのを後ろから見ていたのだろう。
(なんだよ、嫌味かよ)
 そう思ったが相手はマリの先生。 先生という職業になんとなく苦手意識のあるシンゴが黙っていると、ナカイがマリを抱き直しながら言った。
「ほら、マリちゃん、おじちゃんにいってらっしゃいって」
「センセ・・・あの・・・そのおじちゃんってのやめてもらえません?オレ、一応まだ23なんで」
「へっ?うっそ、そんな若いの?」
 思わず口調が素になったナカイがすぐに丁寧語に戻して言う。
「それじゃなんて呼びましょうか?」
「シンゴって・・・名前で」
「んじゃ、マリちゃん、シンゴおじちゃんにバイバイって」
 ナカイがマリの小さな手を取ってシンゴに向かってバイバイと振る。その顔には確信犯のにやけた笑顔が浮かんでいた。
(・・・やっぱムカつく)
 そう思いながらシンゴは保育園を後にした。

[続く・・・はず]


忘れた頃に突然続く話。はじめはどうなってたか自分でも忘れていた・・・という情けない状態。でも、今回も話は大して進んでない。そして続きは・・・う〜ん、いつなんだろう?(苦笑)


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