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Fiction お話

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Virtual Diary 「シンゴ育成日記」 Thu 22 Jul 1999 〜

まえがき

この話の主人公はもうすぐ20歳になる専門学校生のマコちゃんです。
マコちゃんは親元を離れて学校のある街でひとり暮しをしています。

このちょっと変なお話は、ある5月の日曜日の昼下がりから始まります。

この日、マコちゃんは遊びに行く予定もなく、朝から洗濯機をまわし、 「いいとも増刊号」を見ながら部屋のお掃除をしました。
そして、洗濯物を干し終わって、トーストとコーヒーで朝食兼昼食を済ませてしまうと、 もうすることもなくなってしまって、部屋でゴロゴロしながら見るともなくテレビを見ていました。

そんなところに、ピンポーンと玄関のチャイムが鳴りました。急いで出てみると、
「宅急便で〜す。」
 モスグリーンの制服を着たノッポの宅急便屋のにいちゃんでした。
「取り扱い厳重注意ってことなんで気をつけてくださいねっ。」
 ニコニコ笑顔の宅急便屋のおにいちゃんは、妙に元気で明るい調子で言いながら、 はいっ!とマコちゃんにその30cm四方くらいのダンボール箱を差し出しました。
宅急便?誰から?と差出人を見ると「エンジェル商会」と書かれていましたが、心当たりがありません。 でも、確かにあて先はマコちゃんの住所と名前でした。
「これって代金引換じゃないですよね?」
 最近よく聞く変な詐欺まがいの商品?と思って尋ねると、
「いいえ、違いますよ〜。じゃ、ココにサインね。」
 そのノッポの宅急便屋のにいちゃんがおっきな口をニッと横にしてニコニコ笑いながら言うもんだから、 マコちゃんは思わずサインをしてその荷物を受け取ってしまいました。
「それじゃ、ど〜もっ。頑張ってね〜。」
 頑張って、と宅急便屋のにいちゃんに言われるのも変な話なのですが、 そのときのマコちゃんにはそれを不思議に思う余裕はありませんでした。

こうしてこのちょっと変なお話は始まったのです。
つづきはマコちゃんの日記にてどうぞ・・・。



5月9日(日) 曇り

 今日はなんだかちょっと不思議な日だった。

 というのも、宅急便で変な荷物が届いたのだ。
送り主は「エンジェル商会」というところからなんだけど、 通販なんか頼んだ覚えはないし、変だなぁと思ってその会社に電話してみたら、
 「この電話番号は現在使われておりません。」
これは一体どういうことなんだろう?
とりあえずこのままにしておくわけにもいかないので、恐る恐るその箱を開けてみた。

 するとその中には、なんとくしゃくしゃに丸めた大量の新聞紙をクッションにして タマゴがひとつ入っていたのだ!
そう、タマゴ! 紛れもなくタマゴなのだけど、それがニワトリのタマゴじゃないことは間違いないみたい。
だって、そのタマゴは20×10cmくらいの大きさで、 ちょっと褐色掛かったオフホワイトに黒っぽい斑点がついていたから。

 改めて箱の中を見ると、タマゴの脇に白いカードが入っていた。
2つ折りのそのカードには、
 「これは『シンゴ』のタマゴです。大切に育ててください。」
と、ワープロの文字で書かれていた。
とりあえずその箱をそっと抱えて部屋へ持って入ってはみたものの、 どうしていいやらわからない。
『シンゴ』ってなんだろう?と思って、 広辞苑やらインターネットやらで調べてみたけど、 そんな名前の動物も昆虫も見つからない。
う〜ん、『シンゴ』って何だろう?
育てるったって、どうすればいいんだろう?抱いて寝ろとでもいうのかなぁ?
でも、捨てるわけにもいかないしなぁ・・・。
仕方ないので、タマゴはその箱に入れたままで部屋の片隅に置いてある。

 仕方ない、とりあえず今日は寝よう。

*言い訳させて〜! (22 Jul 1999)*



5月14日(金) 晴れ

今日は人生最大の驚きの日だった!
なんとあのタマゴがかえったのだ!びっくりしたよ〜、ホント。

例のタマゴはダンボールに入れたままになって半ば忘れかけていたんだけど、 今日、テレビを見ていたら、なんだか部屋の隅でカサコソ変な音がする。
で、不思議に思ってその箱を覗いてみたら・・・なんと表面に亀裂が入りかけていた。
その割れ目はみるみるうちにだんだんが長く伸びていって、そのうちにピシッという音がしてタマゴが2つに割れた。
一体何が出てくるのか・・・変な猛獣だったらどうしよう?ととっさにスリッパを片手に待ち構えちゃったんだけど、 中からモソモソと姿を現したのは・・・。
もう、心臓、止まるかと思った〜。
だって、人間だったんだもん!いや、正確には「人間に似た形をした生き物」
大きさ15cmくらいで、あたまが大きいの・・・三頭身くらい。
でも人間と違うのは、耳! 人間の耳じゃなくて、猫の耳みたいなぴんと立った三角なのが頭に付いてる。
あ、あとシッポだ。 シッポがあるのよ、3〜4cmくらいの猫のしっぽみたいな長いのが・・・。
あ〜、ホントにびっくりしたぁ。まだドキドキしてる。

しばらくすると小さく丸まっていたその生き物は、手足をだんだん伸ばしてバタバタさせ始めた。
よ〜く見ると目鼻立ちのはっきりしたとっても可愛い顔をした子だった。
その子は箱を覗き込んでいたわたしの顔を見るとむちゃくちゃびっくりしたような表情をして、 いきなり立ち上がって箱から外へ出ようとジャンプした。
でも、いかんせん箱がちょっと高すぎて、何回かジャンプを試みて失敗!
するとその子はもう一度わたしの顔を見上げて、今度は慌てて箱の中に敷いてあった新聞紙をひっくり返し始めた。
 (何をするんだろう?)
と思っていたら、その新聞紙の下から着せ替え人形に使うような小さなサイズの洋服が出てきて、
 (あらまぁ?)
と思って見ていると、 その子はわたしに背中を向けて引っ張り出したちっちゃなTシャツと半ズボンをそそくさと着込んだの。
恥ずかしがってたんだね〜、思わず可笑しくて笑っちゃった。
でも、ちゃんと見ちゃったもんね〜、あの子、男の子だった。(笑)

服を着たその子は、まだ脅えた眼をして改めてわたしの顔を見上げた。
 「大丈夫、何にもしないから。」
と言ってみたけど、通じたのかどうかはわからないな〜。
でも、とりあえずわたしが危害を加えるつもりがないことは分かったらしくて、 しばらくすると箱の隅っこに丸まって寝てしまった。

ぐっすり寝込んでいるみたいで、今夜はどうやらもう起きる様子はないみたい。
わたしももう寝よっと。あんまりびっくりしたんで、疲れちゃった。
それにしても、あの子が『シンゴ』なのかなぁ?

(28 Jul 1999)



5月16日(日) 曇り

タマゴから生まれたあのコは、あれから丸一日以上ず〜っと寝ていた。
今朝わたしが起きて箱を覗き込んだ時も、 箱の隅で丸まったまんまの格好で寝てるから、 死んじゃったんじゃあ?と心配したけど、スースー寝息を立ているから生きていることは間違いない。
わたしが部屋で掃除機をガーガーいわせてても全然起きないし、 お昼近くにわたしがコンビニに買い物に行って帰ってきてもまだ寝ていた。

買ってきた食パンと卵と牛乳でわたしがフレンチトーストを作ってコーヒーを入れて、 さぁ食べよう、としたところでその匂いに誘われたのか箱の中であのコがごそごそと動き出した。

箱の中を覗いてみると、あのコは大きく伸びをしてわたしの顔を見上げた。
くしゃくしゃの寝グセの頭をなでようとわたしが手を伸ばしたら、 あのコはすごい勢いでささっと後ろにあとずさって上目遣いにこっちを見ていた。
あぁ、まだ怖がってんだなぁ、と思ったからしばらく手を出すのは止めることにして伸ばしかけた手をひっこめた。

「ねぇ、君、『シンゴ』っていうの?」
 わたしが試しに聞いてみたら、恐る恐るわたしを見上げていたそのコは小さくコクンと肯いた。
どうやらわたしの言うことはちゃんとわかっているらしい。これでこのコの名前は『シンゴ』に決定!
「ねぇ、シンゴはどこから来たの?」
 その問いには「?」が100個くらい付いたようなきょとんとした顔をした。
そりゃタマゴから生まれたばかりのコに「どこから来た?」なんて聞いても無理か・・・。
そう思っていたら、シンゴは恐る恐る手を伸ばしてわたしの後ろのテーブルを指差した。
そのテーブルには、わたしが食べかけていたフレンチトーストとコーヒー。
「お腹空いてるの?」
 と聞くと、そのコは今度は大きくぶんぶんっと頭を振って肯いた。

わたしがフレンチトーストを指先大くらいに小さく千切って差し出したら、 シンゴはそれを両手で抱えるように受取ってぱくぱくと食べ始めた。
彼には大きすぎるトーストをすごい勢いで一気に食べてしまったので、 わたしが次を差し出しすと、それもまたぱくぱくと食べた。
3切れめを食べている途中、あまりの勢いで食べていたせいでのどを詰まらせて目をシロクロさせていたので、 わたしは慌ててフレンチトーストに使った牛乳をコップに入れ、 それをスプーンですくって、箱の中で苦しそうにしているそのコに差し出してやった。
すると彼はそのスプーンの端を両手で持って、杯を空けるようにごくごく飲み干した。
そして、ふ〜っと大きくひと息つくと、わたしの顔を見てはじめてちょっと微笑んだ。
顔じゅうを大きな口でいっぱいにした可愛い笑顔だったなぁ・・・。

シンゴはそれで満足したらしく、しばらくうろうろと箱の中を歩きまわっていたけれど、 すぐにまた箱の隅に丸くなって眠ってしまった。
それからず〜っと眠っていて、ぜんぜん起きる気配がない。一体何時間寝るんだろ?

(13 Aug 1999)


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